事例紹介

<事例1> 食品工場でアルバイト、特にPRできることは何もない

1.状況:
神奈川県の食品工場で働くアルバイト歴4年、26歳の男性。現在のアルバイトは2社目。前のアルバイトも4年で退職。

2.課題:
高校卒業後、正社員に就職できず食品加工会社の製造部門でアルバイトを続ける。性格はまじめで、いまの職場には4年勤務。しかし、アルバイトという身分では結婚もできないし、将来の生活も不安定。悩んだ末先月退職したが、何の資格もなく、自慢できるようなスキルが身についているわけでもない。仕事のあてもなく相談する相手もいない。

3.支援:
自慢できることが何もないと本人は言う。「人生の根っ子探し」というツールを使い分析すると忍耐力や粘り強さなどが本人の長所として現れた。ヒヤリングを重ねるうちに子供のころから野球をやっていて、今でも休日には草野球を続けているということが分かった。本人は、仕事と関係ないので話さなかったとのこと。忍耐力、チームワーク、メンバーへの気遣い、配慮、モチベーション、意欲等々の特に内的キャリアに自慢できる要素が多々あることが分かり、仕事上のスキルよりも人間力のほうで自己PRをまとめることにした。

4.結果:
機械部品メーカーの品質管理の求人に応募。給料、処遇など求人条件も良く応募者が80名と激戦であったが、書類審査を見事に通過。約15名ほど面接に残り、面接でも主に野球の話を持ち出すようアドバイス。たまたま採用担当の製造部長も野球が大好きという幸運も重なって見事採用となった。

5.教訓:
何もPRできることがないという人も、外的キャリアだけでなく、内的キャリアも含めてじっくりと自分の過去を棚卸すれば必ず一つや二つできることがあるはず。時間的余裕がなく、書類提出の期限直前に慌てて自己PRの内容を考えようとしても、すぐに思い浮かぶものではない。自分で過去を思い出して書き出す、アセスメントツールを使って自己分析を行う、さらに専門家と相談しながら、キャリアの棚卸しをするなどいろいろな方法があるが、いずれにしても時間の余裕のある時に、自己PRの要素を探し出し、まとめておくことが大切。

 

<事例2>経歴に傷をつけたくない、執念でつかみ取った仕事

1.状況:
20歳女性。短大を卒業し、宝石の販売会社に就職したが、入社早々毎日150件の電話による顧客勧誘のノルマを課せられる厳しい業務を経験。ノルマの厳しさから逃れるために転職を決めたのではなく、お客様のためになることと教えられて毎日行っていたしつこい顧客勧誘の業務がお客様から嫌がられ、お客様に迷惑をかけていたことを知り、転職を決意。

2.課題:
支援開始後まもなく採用が決定したが、一般事務で採用されたにもかかわらず、最初からノルマのある営業をさせられた。すぐに退職したが、職歴に傷がつくことを嫌い、次の会社を決めてからいまの会社を退職したいという要望を受け、勤務を続けながら支援を再スタートした。しかし、仕事を続けながらの求職活動は、時間だけでなく精神的にも肉体的にも非常にきつかった。

3.支援:
再スタート後の支援は、会社を退社してからのため、面談時間は早くても午後6時以降。書類の作成支援、数回の面接練習も実施。勤務先が都心のため、毎日が時間との闘いだったが、短大時代にチアガールサークルの練習で鍛えた根性と精神力で耐え抜いた。

4.結果:
努力の結果、在職中に、制服やユニフォームの製作販売会社に一般事務職で正社員として採用された。月給は前職より2割アップした。採用後3ヶ月経って状況確認の連絡をしたところ、会社の風土も非常に良く、人間関係にも恵まれ、毎日楽しく仕事をしているとのことであった。

5.教訓:
一般的にはあきらめて、前職をやめてから仕事を探す人が多いが、彼女の場合は、職歴に傷をつけたくないという一心から、辞めずに頑張り通し、運よく良い会社に巡り合うことができた。就職には運も必要だが、待っているだけでは運は巡ってこない。努力と根性で運をつかみとった形になった。

 

<事例3>バンド活動に熱中し就活せず。あきらめず挑戦し続けた結果

1.状況:
36歳男性。アルバイトで数社で販売の仕事に従事。平均月収18万円。いまの状態では家庭を持つこともできない。将来が非常に不安。何としても今のうちに正社員になりたい。

2.課題:
大学在学中からバンドの演奏活動をし、卒業後もプロを目指し活動していたが道は厳しく断念した。正規の就職活動の経験がないため、書類の書き方、面接の受け方がまったく分からない。しかも社会人としてのマナーもルールも教えてもらったことがない。

3.支援:
「なぜ今まで正社員で働いてこなかったのか」という質問が想定されるため、職務経歴書の志望動機欄にアルバイト歴しかない理由として、音楽でプロの道を断念した経過を明記し、自己PR欄にはアルバイトながら販売職を経験した売り場での工夫・改善・提案などの実績を明記することにした。また、面接の中で、年齢(36歳)相当の受け答えができるよう模擬面接を繰り返し行い、敬語の使い方、服装、挨拶の仕方などを徹底して身につけた。

4:結果:
70人規模のベーカリー会社の販売責任者として正社員採用された。要した支援期間は約1か月。ベーカリーの会社に目をつけたことが今回の成功要因だが、初めからベーカリーの仕事を目指していたわけではない。調理師の道も考えたが、自分はパンやケーキが好きでゼロから始めるならパン屋で働きたいと思い、ベーカリーへの応募を続けた結果、マッチングが成功した。

5.教訓:
あきらめないこと。中途採用は、新卒採用のように3月までに就職を決めなければならないという期限がない。時間はいくらかかっても構わない。今日受けた会社が不採用だったら、明日もっとよい会社が出てくるかもしれない。焦らずじっくり挑戦すればよい。あきらめずに挑戦を続ければ必ず道は開ける。

 

<事例4>一般事務ではなく経理希望。目標達成のためには回り道も

1.状況:
工具卸会社で一般事務を2年間務めた26歳女性。同僚が退職するも補充なく、業務量増で体調を崩し退職。

2.課題:
前職では一般事務の中に一部経理も含まれていたが、経理の専門スキルを身につけたいとの希望から経理事務の求人への応募を続けたが、未経験者の経理職への応募は厳しく、不採用を繰り返していた。緊張しやすく、口頭での説明が苦手で、面接を最も苦手としていた。

3.支援:
方向として、経理そのものではなく一般事務に応募して、まずは正社員として企業に採用されることを目指すことにした。文章力はあるので少しの支援で書類選考には合格するようになったが苦手な面接を克服するため、面接練習を繰り返し、苦手意識を取り除くことに集中した。採用後、経理の勉強をしておけば社内での異動のチャンスに生かせる可能性もあることを説明。本人の長所である「まじめにコツコツ丁寧な仕事をする」をPRするため、うまく説明できない箇所は紙に書かせ、なるべく余計なことは話さないよう何度も面接練習した。

4.結果:
総合介護サービス企業の一般事務職で正社員採用され、仕事を続けながら経理の勉強を続けている。機会をみて経理部門への内部異動を会社に要望するつもり。

5.教訓:
経理の仕事に就くことを目指しているからと言って、未経験の経理の求人だけ狙っていてもなかなかチャンスは来ない。まずは社員に採用されてから機会を見つけて目的の部門への転部願いを出すという方法もある。会社の人事制度にもよるが、恒常的な制度を設け、社員の転部を積極的に受け付けている会社もある。経理で欠員が出た場合、資格を持っていれば外部からの採用よりは応募が有利になるはず。

 

<事例5>意欲を持ち続ければいつか夢が叶う

1.状況:
これまで小学校の給食調理の仕事を契約社員として勤めてきた24歳の男性。仕事の傍らボランティア活動を続け、ボランティア団体の事務の仕事を希望。しかし事務の経験はまったくない

2.課題:
ボランティア活動をしながら団体の職員に、事務の仕事をしたい旨相談したところ、まずは一般企業で事務の仕事を経験してからでないと難しいといわれた。しかし、一般企業でどうすれば経験を積めるのか方法がわからない、事務職の経験のないものが、圧倒的に女性の応募者が多い事務職の求人で採用になることは難しいなど困難が予想された。

3.支援:
未経験職種に応募する方法として、トライアル応募(お試し雇用)という制度があることを案内。特に未経験職種への応募では、まず担当者に会ってもらうことが重要。トライアルであれば直接面接に臨めることと、熱意や意欲を直接担当者に訴えることができる。本人は話が得意ではないため、母子家庭で育ち、これまでに苦労してきたこと、その苦労を克服してきたエピソードなどを簡潔に伝えられるよう面接の練習を3回実施。

4.結果:
トライアル求人の中で、「ソフトウエア開発・情報処理サービス」会社の「事務・営業サポート」職に応募し、練習の成果も発揮され、3次面接までパスし、トライアルでの採用が決まり、さらに3ヶ月のトライアル終了後には正社員として採用された。現在もボランティア活動を仕事の傍ら続けているが、いまはボランティア団体の事務職は希望せず、現在の仕事を続けていくことにしている。

5.教訓:
まったく未経験の分野であっても、本人の熱意、意欲を伝えることができれば道が開ける。今回はトライアルという制度をうまく利用し、書類選考ではなく、直接面接で自己PR、自分が貢献できることなどを面接担当者に訴えることができたことが成功の要因と考えられる。

 

<事例6>職種だけでなく、仕事内容まで良く調べてから応募

1.状況:
大学卒業後、電話の営業会社に正社員で就職し、インターネット回線、プロバイダーの販売を8ヶ月続けたが、顔の見えない電話での営業は精神的につらく、この仕事を将来も続けていくことへの不安から転職を決意した24歳の男性。

2.課題:
当初本人は営業ではなく事務職を希望していたが、前職での販売コンテスト3位の実績、本人の粘り強い性格、適性検査の実施結果などから営業向きであると判断しこれまでと違った職種の営業を薦めた。それに対し、「営業職では応募書類でほかの応募者に勝てる自信がなく、面と向かってのコミュニケーションは苦手」とのことだったが、何の仕事をするにもコミュニケーションは欠かせないため、コミュニケーションを重点的に指導することにした。

3.支援:
仕事に対し自信を失っていたため、8ヶ月という短い期間ながら電話営業でコンテスト3位になったことなど、いままでの仕事に自信を持たせ、電話営業の専門スキルよりも、その業務を通じて身につけた忍耐力、最後まであきらめない粘り強さ、顔の見えない相手との対話の仕方などを自分のセールスポイントとしていくようアドバイス。
面接練習を3回行い、自分のセールスポイントを紙に書き出し、暗記するまで繰り返した結果、3回目の面接練習では見違えるように変わり、自信をもって話せるようになった。

4.結果:
4次面接まであった大手菓子製造メーカーの営業職に正社員採用。応募者60名の難関を突破して合格した。(給料は前職より12%アップ)
支援期間3ヶ月

5.教訓:
前職の営業で自信をなくし、自分でも営業は向かないと思い込んでいたが、営業職がすべて向かないわけではなく、扱う商品や営業方法によってはできるものもあるかもしれない。仕事を選ぶときは、職種だけでなく、扱う商品の種類や方法まで調べておくことが必要。(例えば営業なら、直販かルートか、単品売りかシステム売りか、物売りか機能売りか、販促のバックアップ体制があるのかないのかなど)